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5709 516 交直流電車(近郊形) 付図(その7) SEDブレーキ装置 中央鉄道学園

教科書
06 /29 2023
SEDブレーキ装置の概要です。
SEDブレーキ概要
新性能電車は、101系にSELD電磁直通ブレーキが採用されて以来、205系に電気指令式ブレーキが採用されるまで、SED電磁直通ブレーキを基本として、形式ごとの用途に合わせた派生形が、ブレーキ装置として搭載されました。
SELDとは、S Straight
       E Electromagnetic
       L variable Load
       D Dynamic     で、「発電ブレーキ併用応荷重装置付電磁直通ブレーキ」のことです。
近郊形では、応荷重装置を付けないので「SED」となります。なお、711系は「SEL」です。

上図の赤枠内がクハの、青枠内がモハのブレーキ装置です。個々の装置それぞれが、技術者の創意と事故から学んだ改良の結晶なのですが、図面だけから読み取るのは難しいので、概略を検討するのにとどめたいと思います。
電磁直通ブレーキは、編成分離などの事故に対してはフェールセーフではないので、自動ブレーキをバックアップとして備えています。旧形電車に連結するとき、機関車に牽引されるときにも、自動ブレーキを使用することができます。
下図では、電磁直通ブレーキ関係の装置は赤色で、自動ブレーキ関係の装置は青色で、両方に関係する装置は緑色で示しました。

以下の説明は、各装置の機能の一部の概略を記したものです。

クハのブレーキ装置です。

SEDブレーキTc
空気管の略称のSAPは直通管、BPはブレーキ管、M Rは元空気ダメ管、CPは制御管です。

図にはありませんが、空気圧縮機で作られた圧力空気は、元空気ダメに蓄積されます。調圧器の働きで、編成中の空気圧縮機は同期して動作します。元空気ダメ圧力が7.0kg/cm2で入り、8.0kg/cm2で切りとなります。
元空気ダメは空気圧縮機がある車両にありますが、M Rを通じて編成各車の供給空気ダメに送られます。この2つの空気ダメは165リットルの大きな空気ダメです。

○電磁直通ブレーキ(複式逆止メ弁まで)
ブレーキ弁ハンドルを回してセルフラップ帯(15°〜80°)に置くと、C Pを通って、B1電磁直通制御器へ空気が送られます。このとき、ブレーキ弁のセルフラップ機構(自動重なり)によって、ハンドル角度に応じた空気圧を発生させて、B1電磁直通制御器へ圧力空気を送るので、ブレーキ力の調整が従来の自動ブレーキ方式の電車に比べて容易になりました。

初期の新性能電車はB55電磁直通制御器を使用していましたが、機器の進歩により、交直流電車ではより構造が簡単なB1電磁直通制御器が使用されています。

B1電磁直通制御器に送られた圧力空気は、ビストンを図では右に押します。すると、218、219線の接点が閉じて、D電磁吸排弁のうち、ユルメ電磁弁は閉じ、ブレーキ電磁弁は開いて、供給空気ダメから、SAPに圧力空気が流れ込み、B1電磁直通制御器のピストンを左に押します。C PとSAPの圧力が釣り合ったところで、D電磁吸排弁のブレーキ電磁弁が閉じ、SAPの圧力上昇は止まります。

ここでブレーキ弁ハンドルを回すと、セルフラップ機構が作り出す空気圧がハンドルの位置に応じて変わるので、そのたびにB1電磁直通制御器のピストンが左右に動いて、218、219線の接点が閉じたり、開いたりして、D電磁吸排弁のユルメ電磁弁、ブレーキ電磁弁が閉じたり、開いたりしてSAPの圧力、すなわちブレーキ力を調整することができます。ブレーキ弁ハンドルをユルメ位置(0°)に置けば、C Pの圧力は0になるので、SAP圧力も0になります。

SAPの圧力空気は、複式逆止メ弁へ送られます。

発電ブレーキについては、モハの項で検討します。

○自動ブレーキ(複式逆止メ弁まで)
ブレーキ弁ハンドルを回して自動ブレーキ帯常用位置(140°)に置くと、BPの圧力空気が排気されます。自動ブレーキがユルメの時のBPの圧力は5kg/cm2ですが、常用位置に置いた時間に比例してBPの圧力は低下します。

ウエスチングハウスが発明した巧妙な制御弁を発展させたA制御弁は自動ブレーキの中心的な機構です。A制御弁はBPの圧力が低下すると、補助空気ダメからブレーキシリンダ(このブレーキ装置ではA制御弁とブレーキシリンダは直結していなくて、作用空気ダメが仮想的なブレーキシリンダの役割を持っている。)へ圧力空気が送られブレーキがかかります。このブレーキ装置では、途中の複式逆止メ弁へ送られます。

ブレーキ弁ハンドルを非常位置(165°)まで回すと、図には書いてありませんが、E電磁吸排弁が動作してBPの非常減圧を行い、A制御弁の作用で付加空気ダメの圧力空気もブレーキシリンダへ送られ、より強力なブレーキがかかります。

ブレーキ弁ハンドルを直通ブレーキ帯に置くと、自動ブレーキとしてはユルメ位置になるため、BPに5kg/cm2まで圧力空気は送られ、A制御弁の作用でブレーキシリンダの空気が抜けブレーキが緩みます。いっぽう、補助空気ダメ、付加空気ダメには圧力空気が送られ、次のブレーキに備えます。

ブレーキ弁ハンドルを重ナリ位置(125°)に置くと、BPは減圧も加圧もされない状態になり、ブレーキ力が保たれます。

○複式逆止メ弁からブレーキシリンダ
複式逆止メ弁は、直通ブレーキ系統からの圧力空気と、自動ブレーキ系統からの圧力空気とを比較して、より高い圧力の方の圧力空気をA中継弁に送ります。

A中継弁は、複式逆止メ弁からの圧力空気と等しい圧力の圧力空気を、供給空気ダメからブレーキシリンダへ送り、また、ブレーキシリンダから排気します。
中継弁の設ける目的を述べたテキストがないのですが、どうもA制御弁周りの空気ダメは容量が小さいので、それらの空気でブレーキシリンダを直接動かすのは得策ではないので、容量が大きい供給空気ダメからの空気でブレーキシリンダを動かそうということのようです。

ブレーキシリンダに送り込まれた圧力空気がピストンを動かし、ブレーキテコや制輪子などの基礎ブレーキ装置を動かして、ブレーキ力を発生させます。

○B3A吐出シ弁
この図には書いてありませんが、いわゆる車掌弁で、紐を引くと、BPを減圧してブレーキを作用させます。

○気圧スイッチ
この図には書いてありませんが、BP圧力が3.0kg/cm2以下になると、電気回路を開くスイッチです。ある程度のブレーキ力が確保できない状態では力行できないようにする保安装置です。


モハのブレーキ装置です。
SEDブレーキM

クハと同じ部分は省略します。

○発電ブレーキ
ブレーキ弁ハンドルを直通ブレーキ帯の25°から90°に置くと、ブレーキ弁の電気部の接触部が接触し発電ブレーキの制御回路を構成します。したがって、通常の運転操作で電磁直通ブレーキを動作させると、M車には発電ブレーキが作用します。しかし、そのままでは、M車には空気ブレーキと発電ブレーキとが作用してしまい、ブレーキ力が過大になります。

○締切電磁弁、D圧力調整弁
発電ブレーキが作用するのは高速域から30km/hくらいまでです。発電ブレーキが有効に作用している時には、M車には空気ブレーキが作用しないようにする機構が、締切電磁弁、D圧力調整弁です。
発電ブレーキが作用している間、締切電磁弁の作用でSAPからの圧力空気はD圧力調整弁を通って複式逆止メ弁に送られます。
D圧力調整弁は発電ブレーキが作用している間は、ブレーキ弁ハンドルが67°までの間は、ブレーキシリンダの0.4kg/cm2の圧力空気を送ります。このブレーキシリンダ圧力では、空気ブレーキ力はほぼ0ですが、発電ブレーキから空気ブレーキへ切り換える時に動作が遅れないようにするためのものです。これを初込メ作用といいます。
オクレ込メ作用は、最大発電ブレーキ力以上のブレーキ力が必要な時に、ブレーキ弁ハンドルを67°から80°に回すと、最大1.6kg/cm2の圧力空気をブレーキシリンダへ送ります。
発電ブレーキのための主制御器のカムが最終段まで進段すると、締切電磁弁の作用でSAPからの圧力空気はD圧力調整弁を通らないで複式逆止メ弁に送られます。

○気圧抵抗器
図にはありませんが、M’車に取り付けられていて、SAPの空気の圧力を可変抵抗器の抵抗値に読み替える装置です。ブレーキ弁ハンドルが30°〜67°の間のSAPの圧力に対応していて、この間で発電ブレーキ力が空気ブレーキ力に見合ったものになるように制御します。

▶︎◀︎▶︎◀︎▶︎◀︎▶︎◀︎
これくらいの予備知識があると、電車のブレーキ装置のテキストを読む時に、入りやすいと思います。

参考文献
『直流用 新形電車教本』 関東鉄道学園編 交友社
『直流電車』 中央鉄道学園編 交友社
『最新交直流電車』 関西鉄道学園編 交友社
『直流 交直流 新形電車空気ブレーキ装置解説』 伊藤正治 交友社



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5709 516 交直流電車(近郊形) 付図(その6) TR62形台車 中央鉄道学園

教科書
06 /26 2023
TR62形台車です。
62 TR62形台車組立図
 ※赤い線は、断面図の断面の位置です。
 ※本項(その4)DT21B形台車、(その5)TR62形台車揺レマクラ装置 も参照してください。


平面図(英字は3図で共通です)
TR62形台車平面図
A:台車ワク横バリ TR62形台車は、踏面ブレーキに代わってディスクブレーキを採用したので、ブレーキシリンダや制輪子ツリ受を取り付けるため台車ワク横バリを2本に分けてあるのが特徴です。そのため、上揺レマクラが平面図に書き込まれています。
B:横揺レ止メ装置 台車ワク側バリに当たる部分には、防振ゴムが取り付けられています。
C:上心皿
D:ブレーキシリンダ 台車ワク横バリに取り付けられたブレーキシリンダは、ピストンが左右に2つあり、ブレーキを作用させると左右に拡がるように動きます。
E:制輪子 ブレーキディスクに当たる部分には、ブレーキパッドが取り付けられています。踏面ブレーキよりも、ブレーキ力を強めることができ、高速域でM車の発電ブレーキに見合ったブレーキ力を得ることができます。
F:ブレーキテコ ブレーキシリンダのピストンと、制輪子をつないでいます。支点とピストン、制輪子の距離が異なるため、テコの原理でピストンを押す力よりも、制輪子に発生する力の方が大きくなります。
G:ブレーキディスク 車軸に取り付けられたブレーキ体に、半円形に2分割したブレーキディスクがボルトで固定されています。1軸に2枚取り付けられています。
H:ノック 2分割されたブレーキディスクが2個のノックで結合されて1枚のブレーキディスクになります。
I:台車ブレーキ管 車体側のブレーキ装置と、台車側にあるブレーキシリンダをつなぐ空気管です。

正面図
TR62形台車正面図
D:ブレーキシリンダ
J:揺レマクラモリ 上揺レマクラを前後方向に保持し、牽引力を伝えます。
K:車警装置受電器 ATSーB形の受電器は連結器胴受に取り付けられますので、それではないようです。TR62は、近郊形電車に使われていて、111形のように東海道線を運転する車両にも使われています。東海道線には、ATSよりも早く、A形車内警報装置が使われていて、これは軌道回路によって信号を列車に伝える方式だったので、おそらくA形車内警報装置の受電器ではないかと思われます。

側面図・断面図
TR62形台車側面図
E:制輪子
G:ブレーキディスク


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5709 516 交直流電車(近郊形) 付図(その5) TR62形台車揺レマクラ 中央鉄道学園

教科書
06 /24 2023
TR62形台車の揺レマクラ装置の図面です。
モハの台車は、101系で開発されたDT21を近郊形用にリメイクしたDT21Bでした。101系は、オールM編成で計画されましたが、予算の都合などでT車も製造されました。これらの車両はいずれM車に改造されることを予定してDT21から主電動機関係の装置を取り除いた、DT21T台車が作られました。しかし、オールM編成は取り止めとなり、101系のT車にはTR64形台車が作られました。
いっぽう、近郊形では、通勤電車ほどの高加減速性能が求められないので、当初からクハも製造され、これに使われた台車がTR62形台車です。TR62形台車の全体像は次項でご紹介することとし、今回は、台車の中央部にある揺レマクラ装置の図面を検討します。

TR62形台車ユレマクラ装置
上段は平面図、中段は側面図と断面図、下段は備考です。
DT21Bとの最大の違いは、台車枠横バリが2本に分けられたため、上揺レマクラと車体との空間が空いていることです。2本に分けたのは、TR62では踏面ブレーキをやめ、ディスクブレーキを採用したため、この関係の装置を台車ワク横バリに取り付けたためです。したがって、平面図を見ると、DT21Bでは台車横バリに隠れていた上揺レマクラが直接に見えるように書かれています。ただし、台車ワク側バリは、上揺レマクラの上を通っているので、上揺レマクラ→マクラバネ→下揺レマクラ→吊りリンク(揺レマクラツリ)→台車ワク側バリという荷重の伝わり方は変わりません。

A:オイルダンパ Jのマクラバネとともに、台車の振動を吸収します。
B:揺レマクラツリ 台車の左右方向の復元力を発生させます。
C:側受 心皿とともに、車体の荷重を支えます。
D:揺レマクラモリ部 台車ワク側バリについた揺レマクラモリと摺動することで、上揺レマクラを前後方向に保持します。
E:横揺レ止メ装置 DT21Bでは、台車ワク横バリの心皿貫通穴の部分に取り付けられて心皿が当たるようになっていますが、TR62では、台車ワク横バリが上揺レマクラと離れて心皿貫通穴が無くなってしまったので、台車ワク側バリに当たるようにして、車体が左右に揺れすぎないように抑えます。
F:上揺レマクラ
G:上心皿
H:台車ワク横バリ
I:台車ワク側バリ
J:マクラバネ
K:下揺レマクラ
L:下心皿
M:車体台ワク
N:車両限界




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5709 516 交直流電車(近郊形) 付図(その4) DT21B形台車 中央鉄道学園

教科書
06 /19 2023
DT21B形台車の図面です。

57 DT21B台車組立
上は3面図で、それぞれの拡大図を次に示します。

57-1DT21B台車平面図

心皿:車体台枠に取り付けられた上心皿が書かれています。台車枠横ばりの中央に心皿を通す穴があいていて、上揺れまくらの下心皿に嵌め込まれます。この心皿によって、牽引力が台車から車体に伝わります。
上揺れまくら:台車枠横ばりに下にあります。側面図を見ると重なり方がわかります。中央に下心皿があり、左右に枕ばねとオイルダンパを取り付け、枕ばねを取り付ける箱状の部分の上に側受がのります。
下揺れまくら:上揺れまくらの下にあります。上揺れまくらとの間に枕ばねとオイルダンパがあり、揺れを吸収します。
オイルダンパ:枕ばねとともに上下の振動を吸収します。オイルダンパの内部には、振動でできる油の動きを阻止する構造があって、振動を減衰させる役割があります。
側受:車体の荷重は心皿と側受によって支えられます。この台車では、左右の側受が10%ずつを負担します。車体側と台車側の側受は摺動するようになっていて、台車が回転するときに抵抗として働き、蛇行動を抑える役割りも持っています。
吊りリンク(まくら吊り):下揺れまくらと台車枠側ばりを結びます。左右の吊りリンクは側面図を見るとわかるように、斜めに取り付けられていて両方を合わせると、「ハ」の字になっています。このため、台車枠側ばりと下揺れまくらの位置が左右にずれると、それを打ち消すような復元力が発生します。
台車枠側ばり:台車枠横ばりとで、「H」字の台車枠となっていて、2本の車軸が平行になるような強固な枠となっています。
台車枠横ばり:左右の側ばりを結び、中央に心皿を通す穴があいています。また、主電動機と歯車箱が取り付けられています。
主電動機:電車の牽引力を発生させます。釣りかけ式と異なり、台車枠横ばりに固定されていますので、レールからの振動は、軸ばね、枕ばねによって緩和されて主電動機に伝わります。このため、車軸と、主電動機の電機子軸とは相対位置が変化するので、これを調整しながら主電動機の回転力を車軸に伝えるのが、カルダン駆動方式です。
主電動機冷却風道:モハの妻面にあった、冷却風の取り入れ口からのびた風道がここにつながり、主電動機の温度上昇を抑えます。
歯車箱:車軸に取り付けられた大歯車と、歯車箱に取付けられた小歯車を納める箱です。この箱の中の潤滑油が歯車にかかるようになっています。大歯車と小歯車の位置は相対的に変化しないので、はす歯歯車で噛み合うようになっています。
歯車箱吊り装置:歯車箱の一端は防振ゴムと取り付けた歯車箱吊り装置介して台車枠横ばりに取り付けられています。他端は、車軸に軸受を介して取り付けられているので、車軸と、歯車装置の半分との荷重が、ばねをはさまないでレールに荷重がかかる、ばね下荷重になります。釣りかけ式では、主電動機の半分の荷重もばね下荷重だったので、だいぶ緩和されることになります。
車軸:左右の車輪を平行に保ち、電動車では大歯車が取り付けられています。
車輪:レールに接して、電車の荷重を支え、牽引力を伝えます。自動車のタイヤが路面に接する面積はハガキ1枚分と言うCMがありましたが、ゴムタイヤよりさらに変形しにくい鉄輪ではレールとの接点は、さらに点に近いでしょう。
ブレーキシリンダ:空気ブレーキ装置からブレーキシリンダに送り込まれた圧力空気によって、ブレーキてこ以下の基礎ブレーキ装置が作用して、ブレーキをかけます。また、圧力空気が抜けると、シリンダ内のゆるめばねによってピストンは元の位置に戻され、ブレーキは弛みます。



57-2DT21B台車正面図
台車正面図です。
A:心皿 
B:上揺れまくら
C:枕ばね 二重ばねになっていて、内側に巻きの向きを逆にしたコイルばねが入っています。
D:オイルダンパ
E:下揺れまくら
F:吊りリンク(まくら吊り)
G:軸箱守 台車枠側ばりと一体に作られていて、軸箱の動きの案内をするように溝が作ってあり、軸箱とは摺動するようになっています。軸箱の前後左右動を抑え、車輪が正しい位置を保つようになっています。
H:軸箱 車軸を支えるもので、内部は円筒コロ軸受になっています。
I:軸ばね 軸箱の両側に軸ばねを置く方式をウイングばね式と言います。
J:車輪 車輪径は860ミリです。
K:空気ブレーキ配管 車体と台車の空気ブレーキ装置を結ぶ配管です。
L:ブレーキシリンダ
M:制輪子 車輪踏面に鉄片等を押し当ててブレーキをかけます。
N:側受 この図面には書かれていませんが、この位置に側受が取り付けられています。


57-3DT21B台車側面図

A:車体台枠
B:上心皿
C:横揺れ止め装置 上心皿と台車横ばりとの横方向の動きを抑えるための装置です。
D:下心皿 台車の回転中心ともなるので、固定することはできず、車体の荷重で上揺れまくらに挿してあります。「関西本線平野駅事故」で検索すると、111系のクハの横転した車体から台車が外れた写真があり、車体下面の心皿を見ることができます。犠牲になった方もいらっしゃいますので、心してご覧いただければと思います。
E:台車枠横ばり
F:上揺れまくら
G:台車枠側ばり
H:側受 製作年次によって構造が変わっています。
I:枕ばね
J:オイルダンパ
K:下揺れまくら
L:吊りリンク
M:軸ばね
N:車輪 軌間は1067ミリですが、フランジの内側の間は990ミリです。フランジと踏面を合わせた車輪の幅は125ミリです。
O:歯車箱
P:ブレーキシリンダ
Q:車両限界 台車の下部は車両限界いっぱいにおさまるように設計されていることがわかります。




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5709 516 交直流電車(近郊形) 付図(その3) クハ401形式図 中央鉄道学園

教科書
06 /11 2023
クハ401の図面です。

68 クハ401形式図
A:前面
この図面の前面は、初期型の形状です。前面窓が大きいですが、その後、踏切事故対策で、前面が強化され、前面窓の高さが小さくなり、運転台が高くなりました。(*1)下図が後期型の先頭部です。引き締まったイメージになりました。前面窓と下側の手すりとの間の小さな四角は、通風口です。

クハ401先頭部後期型
交直流制御車 クハ401−89、90 車両設計事務所 から先頭部分を抜粋

(*1) 401・421系より後に製作された111系では、クハ111の先頭部は当初から高運転台タイプで製作されています。「111系近郊形直流電車」(1962年8月 臨時車両設計事務所)によれば、「運転台を300mm上げて安全性を高めてある。」とあります。

B:貫通路
401・421系は、クハーモハーモハークハの4両編成を1つのユニットとして運用されますので、増結するときは、4両単位で行います。増結した時には、クハの先頭部は貫通路として使用されます。図を見ると分かるように、貫通路を作るときには、前面開戸、仕切開戸で運転室を閉鎖します。

C:架線電圧検知装置
Cのあたりに、下図のようなアンテナが取り付けられています。
静電アンテナ
これは、架線電圧検知装置のアンテナ部分で、静電アンテナとよばれます。
この装置は、パンタグラフを上げてないときにでも、架線に交流20000ボルトが流れているかを検知します。(直流1500ボルトは検知できません。これは、交流と直流との性質の違いによります。)
パンタグラフが上がってないときに架線に通電されているかを知りたいとは、どういうことでしょうか? 直流電車では、パンタグラフのカギからロープを垂らして、これを引っ張ってカギをはずしてパンタグラフを上昇させることができますが、パンタグラフに20000ボルトの電圧がかかる交流・交直流電車ではこんな危険なことはできません。代わりに、バッテリで駆動するコンプレッサ(ベビコン)で圧力空気を作って、この圧力空気を使ってパンタグラフを上昇させます。パンタグラフから電気を取り込めるようになれば、通常のコンプレッサを使って圧力空気が作れるようになり、バッテリも充電ができるようになります。
どのテキストを見てもこの装置の目的が書いてないので、ここからは推測ですが、留置してある電車を動かすために、まず、バッテリ回路を投入して、パンタ上げボタンを押してベビコンを回してと言う手順になるわけですが、ここで架線に電気が流れていなかったらどうなるでしょう。バッテリが充電されないので、バッテリがあがってしまいそうです。このトラブルを防ぐには、架線が通電されていることを確認してからパンタ上げボタンを押せばよいことになります。架線電圧検知装置はバッテリを投入すると動作するので、架線の通電を確認してパンタ上げボタンを押すという手順だったのではないでしょうか。

D:サボ受け
当時は、側面に電動や電光の行先表示装置はないので、駅員がサボを差して、列車の行き先を案内していました。列車本数が少なかったとはいえ、サボの運用も考えなければならないので、ダイヤ改正は大変だったろうと思います。

E:車号標記
特急形ではないので、白ペイントで書かれています。

F:車側表示燈フタ
いちばん目につく車側表示燈は、「戸ジメ用車側表示燈」で、ホームで見ていると、側扉の開閉に応じて赤色灯が点灯したり(ドア開)、滅灯したり(ドア閉)はおなじみでしょう。
ほかにも、「非常警報用車側表示燈」の橙黄色、「事故表示用車側表示燈」の白色の表示灯があります。

G:便所
クハには、便所が付いています。
便所への給水にも圧力空気が使われています。クハの床下には700リットルの水タンクが吊り下げられています。

H:台車
クハの台車は、主電動機が付かないTR62形台車です。ブレーキ装置は、ディスクブレーキです。
一部のクハ401には、踏面ブレーキのTR64形台車が使われていました。

I:自重
クハは主電動機や床下機器が無い分モハに比べて軽くなっていますが、この形式では、コンプレッサをクハに搭載していたのでその分は重くなっています。
換算両数で空積で0.5両分、約5トンの差がありますが、乗客+乗務員+水タンクの水の分になります。

J:電気方式
交直流なので、交流と直流の両方が書かれています。401・403系は50ヘルツ、421・423系は60ヘルツ用です。後に、415系という50・60ヘルツ両用(直流と合わせると3電源)の系列も作られました。
401・421系は主電動機出力が100k W(M T46)、403・423・415系は主電動機出力が120k W(M T54)です。
クハは401・403系はクハ401、421・423系はクハ421、415系はクハ411です。

K:制御装置
主制御器はモハ401・403・421・423に搭載されていて、CS12Dです。CS12は、国鉄の抵抗制御方式の新性能電車に幅広く使われています。
クハには、主幹制御器(マスコン)が搭載されています。運用される線区が平坦線区なので、抑速ブレーキや、ノッチ戻し機能が不要なので、力行4段だけのMC32形です。




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5709 516 交直流電車(近郊形) 付図(その2) モハ402形式図 中央鉄道学園

教科書
06 /07 2023
モハ402の図面です。
67 モハ402形式図

モハ402は、その1で取り上げたモハ403とM M’ユニットを組む電動車で、主制御器を搭載しない方の車両です。モハ402には、パンタグラフ、主変圧器、主整流器を搭載していて、交流区間では主回路等で使用する直流を作り出す、走る変電所とも言える車両です。
パンタグラフから取り入れた電気は、直流ならばそのままで、交流ならばこの車両で直流に変換されて、モハ403へ送られ主制御器、主抵抗器等で制御されて、ユニットを組む2両電動車の8個の主電動機へ送られ、電車を走らせます。

A:交直流電車ならではの屋根上機器です。
パンタグラフの取り付け位置が、パンタグラフ側の台車の中心より車体の中央に寄っています。屋根上機器を取り付けるためのスペースを生み出すためにこのようになったと考えられます。直流電車では、パンタグラフと台車のそれぞれの中心位置は一致させるのが通常の設計です。曲線でのパンタグラフの偏倚に対して有利だからです。
屋根上には、空気遮断器(ABB)、交直切換器、主ヒューズ、ケーブルヘッド、計器用変圧器、交流避雷器、直流避雷器、などが取り付けられています。図に書かれているのは、空気遮断器(箱の上にのっている)と交直切換器ではないかと思われます。
最近の交直流電車では、空気遮断器の代わりに真空遮断器(VCB)が取り付けられています。

7000V超の電気を特別高圧と言いますが、在来線の交流電化では20000Vを採用しているので、屋根上機器を車体から絶縁するために、直流電車(1500V)に比べて大きな碍子が使われています。このため、通常の高さの屋根の上にパンタグラフを取り付けると、折りたたんだ時にも車両限界をはみ出してしまいます。そこで、屋根上機器が取り付けられている部分(5950ミリ)の屋根を低屋根構造(一般部3654ミリに対して3516ミリ)にしています。そして、単に高さが低いだけでなく、機器の重量に耐えられるように、頑丈な構造になっています。

B:低屋根部の通風器
低屋根部には、普通のベンチレターは取り付けられないので、屋根の肩に通風口を設け、車内の天井には、ファンデリアを取り付けて通風を行っています。

子どもの頃、地下鉄日比谷線に乗り入れる東武2000型電車に乗る機会があって、この電車がファンデリアを装備していたのですが、音の割に涼しくならないなぁという印象があります。他の車両ではどうだったのでしょうか?

C:直流性能
主整流器で直流に変換した後は、抵抗制御の直流電車と同じ仕組みで走りますので、直流電車としての性能が書かれています。403系は、主電動機出力100k Wの401系を元に、主電動機出力を120k Wに増強した電車なので、1ユニットに8個ある主電動機の出力は合計960 kWになります。引張力、速度欄の70%、40%は弱め界磁制御をした時の界磁の強さです。

D:歯車比
主電動機側の小歯車と、車軸側の大歯車との歯数の比を歯車比と言います。
歯数に互いに素な2数を選ぶことで、特定の歯同士がより多く噛み合うことなく、どの歯も均等に噛み合うようにまります。

E:交直切換方式
交直セクションの手前にある切換標識で交直切換スイッチを運転士が進入先の電気方式に切り換えると、各機器が順次動作し、電車が無加圧区間、進入先区間と進むと、進入先の電気方式での力行が可能な状態になるように機器が動作します。この方式を一斉惰行順次力行方式と呼んでいます。

F:側受
DT21を元にしたDT21B台車は、車体の荷重を、心皿と左右の側受の3点で受ける構造になっています。側受は摺動するようになっていて、荷重によって台車の動きを適度に抑え、台車が回転しつつも蛇行動は抑えるように工夫されています。


(2023.6.10追記)
A: 補足
交直流近郊形電車の心皿間距離は、13800ミリです。
いっぽう、直流近郊形電車では、車体長が同じ20メートル(連結面間)である111系で、14000ミリとなっています。パンタグラフ付きのモハ110では、パンタグラフと心皿位置が一致して、車体端部から2750ミリになります。
パンタグラフと心皿位置が一致することが集電上は望ましいことは上にも書きましたが、心皿位置が車端から離れるほど、曲線区間で車端が線路中心から離れる量が大きくなります。いっぽう、車体中央部が線路中心から離れる量は小さくなります。
さまざまな条件を検討して、決められたパンタグラフや台車の位置ということでしょう。
なお、車両の製作順から言うと、401・421系が製作された後に111系が製作されているので、111系に交流関係機器を積んだのが401・421系ではなく、401・421系から交流関係機器を除いたのが111系ということになります。



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5709 516 交直流電車(近郊形) 付図(その1) モハ403形式図 中央鉄道学園

教科書
06 /05 2023
国鉄は職員の教育研修に熱心な組織でした。車両にしても、地上設備にしても正確な知識と技能で取り扱わないと、事故につながるおそれがあります。鉄道学園という部署があり、学習用にさまざまな教科書を発行していました。

教科書の本冊はオークションに出回っていることもありますが、付図は分離してしまっていることが多いようです。
付図の中から、わかりやすい図面を見ていきたいと思います。



「516 交直流電車(近郊形)」は、401・403系、421・423系、415系といった近郊形交直流の運転や検修を担当する職員を養成する課程で使われたと思われる教科書です。別冊の付図がついていて、80枚の図面が収録されています。手元にあるものは、一部のページが切り離されてなくなっていましたが、大部分の図面はよい状態でした。

今回は、車体の図面です。

66 モハ403形式図
モハ403 は、M M’ユニットのうち主制御器を搭載する方の車両です。

A:主電動機の冷却風の取り入れ口が妻面にあります。
急行形、特急形など妻面に窓がないタイプの車両では妻面に取り付けられています。通勤形電車では妻面に窓があるので、戸袋の上に取り入れ口があり、戸袋が風導になっていました。

B:側扉両側の座席の幅が、両端扉の妻面寄りでは1300ミリ、その他は900ミリになっています。諸元の定員を見ると座席定員が76人です。クロスシートが、1ボックス4人×12で小計48人。ロングシートが1300ミリタイプ×4+900ミリタイプ×8で小計28人なので、1300ミリタイプは3人掛け、900ミリタイプは2人掛けです。1人分の幅が45センチほどなので、今日の乗客では窮屈かもしれません。

C:グローブ形ベンチレターが取り付けられています。室内から見ると、扇風機の取り付けられている箇所がベンチレターの箇所に対応しています。扇風機の保護枠の中央にJNRマークがついていました。温暖化と言われる今日ほど昭和40年頃は夏が暑くなかったようで、また夏にネクタイをするようなこともなく開襟シャツが普通だったので、夏も過ごせたものと思われます。

D:2段窓で、上下の窓ともに幕板部に上げることができたので、全開にすることができました。上下の窓の開け方の組み合わせで、いろいろな開け方ができました。上段窓を全開、下段窓を途中まで開けると、3段窓の中段窓だけが閉まっているようなパターンになります。これは座っている客の髪が乱れず、立っている客に風が吹き込むという、国鉄の設計者のお薦めパターンだったようです。ところが63電車では中段窓が固定されていたために桜木町事故では大惨事になってしまいました。2段窓でも3段窓のような開け方ができるようにしたこだわりがあったようです。
窓の下に灰皿がついているのも時代を感じさせます。

E:連結面の幌は、電車の場合、片側の車両に付いています。この系列では、クハーモハーモハークハの4両は固定して運用していますので、4両で固定されている編成中の幌はあまり問題はありませんが、8両、12両と連結した時に、クハの先頭の幌は、上り、下りのどちらかの向きのクハが持っていることにしないと、うまくいきません。

F:連結器は、密着連結器です。機械的に連結するだけでなく、SED電磁直通ブレーキのための、元空気ダメ管、制動管、直通管も引き通されています。

G:換算両数は、車両の重さを表します。1両=10トンに換算されます。空車ならば40トン、積車ならば45トンで、差の5トンは乗客の重さにあたります。定員の128人は6トン以上ありそうですが、端数を丸めたためです。
甲種車両や何かの都合で機関車で牽引する時に必要になります。

H:交流性能が空欄なのは、この車両は主変圧器、主整流器を通って交流を直流に変換した後は、直流電車と同じ抵抗制御の電車だからで、交流電車としての特性はありません。


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2401 運転取扱心得(上編) 門司鉄道局 通票鎖錠転てつ器関係(心得95条・細則97条)

運転関係規程
06 /02 2023
f54560zgさんのブログ「懐かしい駅の風景〜線路配線図とともに」で、日田彦山線小森信号場についての記事「小森信号場のナゾ」が載っています。

「昭和24年1月1日現在 運轉取扱心得(上編) (附)運轉取扱細則その他関係諸達 門司鉄道局」から、関係する条文を抜粋します。

2401門鉄運転心得058u
これは、運転取扱心得(昭和23年8月5日 達第414号)、いわゆる本社規程による、通票鎖錠転てつ器の規定です。

これに対して、門司鉄道局が運転取扱細則(昭和23年9月7日 門鉄達甲第182号)で具体的な設置箇所等について定めたのが次の規定です。

2401門鉄運転心得058d

2401門鉄運転心得059

管理者の項から考えて、下段の「小森分岐点」という行が、件の「小森信号場」に相当すると考えられます。

以前、国土地理院の空中写真で調べたところ、いくつかの側線は見つけることができました。



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(2023.6.3追記)
各地点のその後や現状等をご存知の方のコメントをお待ちします。

1 香椎 博多港間 1K320(4K320?)
2 博多 筑前高宮間 1K781
3 段駅構内
4 渡 人吉間 49K900
5 小城 東多久間 8K731
6 小江駅構内
7 肥前吉井 祝橋間 2K250
8 南大分 大分間 138K977
9 竹中 中判田間 131K515
10 岩崎 香月間 2K646
11 小森分岐点
12 浅野側線分岐点
13 呼野 採銅所間 16K800
14 製鉄所側線分岐点
15 古宮分岐点
16 中津原側線分岐点
17 土工線分岐点?
18 入水側線分岐点
19 豊前大熊駅構内


5 小城 東多久間 8K731 について

小城炭鉱付近説明図
国土地理院基盤地図情報から作成 数字は久保田からのキロ程(踏切はストリートビューによる)

小城炭鉱跡の地図です。グーグルマップやストリートビューで見ると、炭鉱の跡がわかります。
8K731 は、砕石場踏切と小城炭鉱裏踏切との間にあったものと思われます。
グーグルマップの航空写真を拡大してみると、小城炭鉱踏切付近を走る列車が写っていて、その久保田方に、線路の北側に沿って細長い線路跡のような土地が見られます。




ksysblog

古い鉄道の資料を紹介します。

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一鉄道ファンの記事であり、各鉄道会社局とは一切関係ありません。
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